日記

しあわせのうらおもて

昨日、卒業生が遊びに来た。みんな今は大学の4年生だ。
その一人が、並居るライバルを押しのけて、今度の4月から公立の小学校の先生になる。
倍率で言うと、かなりの難関。
しかし彼女は、運が良いのひと言では表せないものをもっている。
際立って美人ではなく、どちらかと言うとアニメに出てくる脇役のキャラクターに似ている。
お母さんが心配するほどの、絵に描いたような天然ボケで、職員室で面談をしていると、周囲から何度か笑い声が聞こえたことがある。
採用試験では、面接官まで、笑わせた。
しかも、3回笑われたという。
もちろん、冗談を言ったわけではない。
彼女はこう言った。
「目標は、憧れの先生を、追い抜くことです」
このひと言は、大事な点を突いている。
憧れの先生がいるということは、自分の体験、つまり学校教育自体をおおらかに受け止めているという態度の表明でもあり、
「追い抜く」と言うのだから、これから大いに頑張ってくれるのは、間違いない。
面接官たちは、彼女に安心して任せることができる。
さらに、自分を実際以上に大きく見せたり、逆に謙遜しすぎたりもしておらず、
そのままの彼女の、のほほんとした温かさが伝わってくる。
面接官からはこう言われたそうだ。
「もう追い越したかもしれないよ(笑)」
こんなことを言われる受験生もいないだろうけれど、さすがに面接官は鋭い。
彼女のような豪傑は、なかなかいない。
きっと子どもたちを、明るく厳しく育ててくれるだろう。
その彼女のことだが、昔から、女友達は大事にするが、
男の子とくっついたりした噂はとんと聞かない。
あっけらかんとしているが、なぜか自信がなさそうに見える。
そのせいか昨日は、けっこう厚めの化粧で、ばっちり決めてきた。
そんな厚い化粧をしなくても、充分に人並み以上なのになぁと思いながら、
今度、すごく綺麗になったと言うクラスメートを連れて遊びに来るという。
その子も、彼女と同じ路線だけれど、かなりすっぽ抜けたような豪傑。
綺麗になったという姿は、あまり見たくないなあと思った。
学生時代はあまり華やかでなくても、社会人になって、余裕が生まれたら、
彼女のような子が結婚を考える時期も、けっこう早い。
「先生、いつ結婚されたんでか?」
「あんたがたが卒業して、さびしくなったからね」
「赤ちゃんが出来たって聞いたけど・・・」
「ああ、オレ今六ヶ月だから」
と言いながら自分の腹をさすって、後はごまかした。
元気をもらった一日でした。