新任の司書の先生は、きれい、優しい、仕事が速い。
3拍子そろった、完璧な人だった。
「こんなところに、電気あったっけ」と、思うほど、図書館の奥のほうまで明るくなった。
図書館の利用者も、増えた。
というより、図書館の存在が、初めて認知された。
高校3年生というのは、忙しい。
昼は図書館、放課後は校庭を駆け回る。
校長先生が、僕の名前を覚えているのに、驚いた。
「○○君は、いろんなところで会うね。まるで神出鬼没だ」
と言われて、有頂天になったのだが、その校長先生は、
約800人の生徒全員の名前を覚えていると聞いて、なあんだ。と思った。
オイオイ、それは逆に、すごい校長だぞ、と今は思う。
僕が授業で受け持っている生徒は総勢200人くらい。
名前を覚えているのは、半分以下。
だから、座席票が手放せない(汗)
記憶術を習ったので、一時期は全員分憶えたけれど、
ここ数年、実行していない。
3年生の最後の仕事。夏休みまでで、終わり。
司書の先生と一緒に仕事が出来るのも、最後になった。
さて、ここからは、記憶があいまいなのです。
本の虫干しがあったはずなのですが、僕は部活が忙しかったので、
3年のときにようやく初参加しました。
それで、いったい何をやっているのかさっぱりわからなかったのです。
僕の記憶では、蔵書をくの字に立ててテーブルに並べ、一週間ほど、日干しにする。
というものでしたが、ヤフー知恵袋で調べてみても、そんな方法は出てきません。
本当の虫干しは
「本棚からごっそり抜き出し、全部の本のページをぱらぱらして元に戻す」
これを図書委員が寄ってたかってやるようなのですが、これは記憶にない。
よく分からないけれど、記憶のほうを優先して書いておきます。
日干しといっても、全部の本を干すわけではない。
風通しの悪いところにある本を、テーブルに並べるだけ。
だいたいの本を並べ終えると、司書の先生の
「終わったら帰っていいわよー♪」
という声がして、女の子たちはぱらぱらと帰り始めた。
僕は、一人で高いところの棚を受け持っていたので、まだ終わっていなかった。
女の子たちに混じって帰る勇気もなかったので、間を取ったともいえるけど。
「○○クン♪」
突然、僕を呼ぶ声が、心臓で聞こえた。
その先生の声は、『耳』からではなく、『心臓』に直接とどく。
「頼みがあるんだけれど」
司書の先生から、一週間後、本棚に返す仕事を頼まれた。
「勉強忙しかったら来てくれなくてもいいんだけど、よかったら来て」
僕は、心の中で「いくいく」とうなづきながら、
「ああ、大丈夫だと思います」
と、さりげない振りをして、答えた。
図書館を出た後、教室へ戻りながら、考えた。
「頼まれたのは、僕だけ?」
本棚に戻すのは、そんなに人数の要る仕事ではない。
2人掛かりなら、1時間もあれば、終わってしまうだろう。
「きっと、僕だけだ」
教室には、何人かクラスメートが残っていたが、
僕は、司書の先生に頼まれたことを、誰にも話さなかった。
「オレも手伝うよ」
なんて、いらないいらない。一人で充分だから。
一週間後に、図書館に、用事ができた♪・・・・
僕の「妄想」は、膨らんでいく・・・・・・