こころのくすり

小さな心の思想

僕はある日、先生から教わった遊びにとても興味をもった。
放課後まであと少し。
鉛筆を握り、目では先生の姿を追いながら、
頭の中には、家の中の見取り図。
必要な材料のありかを、思い浮かべていた。
家に帰ると、弟と一緒に準備をはじめた。
うらの畑を通り抜け、線路を2つ渡り、崖を登って、
電柱にたこ糸を結びつける。
たこ糸が絡まないようにたぐりながら、
崖を降り、線路を渡って畑を引き返し、
ブランコの柱にたこ糸の一端を結わえ付けた。
おっと違った。
ストローを通していない。
まだリボン結びができないので、
固く結んでしまった結び目をほどき、
ストローを通して、もう一度結ぶ。
風船をふくらませて、セロハンテープでストローに貼り付ける。
これがうまくいったら、家から小学校までを長いたこ糸で結ぶんだ。
大好きなサエコ先生に手紙を届けたら、
びっくりするだろうか。
遠く汽笛の音が聞こえた。
線路には汽車が走るのだということを、
そのときまで、考えても見なかった。
振り向くと、踏み切りのむこうに、
煙を上げて、機関車が差しかかっている。
(明日につづく)