日記

落ちないリンゴ

いまから数十年前も昔のこと。
実家が、立ち退きを受けました。
なんと、家が新築できることに!!
小さな古い店だったので、とてもラッキーな話でした。
あるとき、母が神妙な顔をして、
「計画が、変更になった」
というのです。
僕は、この計画が、取りやめになったのかと思いました。
だとすると、残念。
ところが、そうではありませんでした。
新しく作られる道路と家との間が、5メートルほど離れてしまうというのでした。
母は、深刻な顔。
その理由は、文字通り、店と道路が離れるから。
え、それの、どこが問題なの?
問題点がつかめなかったので、詳しく聞いたところ、
結局、店と道路の間が、5メートルほど離れるという理由で、
なんとは母、絶望的な表情をしていたのでした。
こういうことって、案外多いんですよね。
小さなことに、すっごく悩んでしまうこと。
僕は速攻で、母に突っ込みをいれました。
「そこ、ちょうど駐車場にできるから、良かったんじゃない?」
実際、現在、そのスペースは、お客さんのための駐車場になっています。
逆に、その駐車場がなかったらと考えると、ゾッとするほど。
母が、一人で悩みを抱えていなくて、良かったなと思います。
母が道路に近いことをこだわったのには、わけがあります。
人の心も、「慣性の法則」に支配されています。
母がこれまでずっと暮らしてきた家は、
すぐ目の前に道路がありました。
車でやってきた人は、店の前の道路にそのまま止めて、
買い物をして帰っていきます。
母にはそれが、便利に思えたんですね。
でも考えてみるとそれは、路上駐車。
お客さんだって、気が気ではないです。
昔、青森で本当にあったこと。
りんごの収穫期に、大きな台風がやってきて、
ほとんどのりんごが木から落ちてしまい、
売り物にならなくなりました。
ここで、慣性の法則をぶち破ってくれる人が現れました。
誰かが行動しないかぎり、いつもどおりに取引されるところでした。
ある人が、こんな意見をだした。
「落ちないで残ったりんごを、落ちないりんごとして、受験生向けに売り出そう」
最近のことかと思いましたが、最初に売り出したのは、
20年も前のことなのだそうです。
その後も、台風などで被害に遭うたびに、売られるんですね。
落ちないりんご
そのりんごを食べたという子がいました。
ひとつ、500円だったそうです。
通常であれば、店頭で100円でも高いと感じますが、
親の目からみると、500円であっても、買う価値があったんですね。
その子は、医学部に進学しています。