僕が今の学校に転勤して、転勤のあいさつを出したのは、5月。
郵便局の、お姉さんに恋をした。
僕は、恋に落ちやすい体質なのか・・・?
違う。運命に従っただけ、だったのだ多分。
僕は、今の学校への転勤に、不満があった。
教員仲間から、羨望を受けるようなトップ進学校。
僕の実力から考えて、まったくつり合わない。
同僚や先輩から「栄転だね。おめでとう」といわれた。
うれしくなかった。
新任校からの案内に、腹を立てた。
「ご栄転、おめでとうございます」
新任校側が使うべき言葉?
傲慢とは、思わないのか?
そう感じてしまうくらい、僕は、ふさぎ込んでいた。
僕には、前任の学校が、これまででいちばん、好きだった。
地方の進学校。
特にどういう特徴があったわけではないが、
ぼくは、その学校を、誰よりも、愛していた。
生徒たちも、僕がいちばん、学校生活を楽しんでいると、ウワサしていた。
「○○ちゃん(僕)のいない学校祭って、考えられない・・・」
生徒の悲痛な声を聞いた。
その学校を去るときも、同僚、先輩の先生たちから、
「この学校にいちばん馴染んでいた先生が、いなくなってしまう」
と言われた。
たくさんの生徒を、裏切ってしまった。
悲しんでいるまもなく、2年生の担任を持たされた。
目が回るような忙しさ。
前任校の生徒たちからのメールは、次第に止んでいった。
しかし、悲しさと、申し訳ない気持ちが、薄れたわけではなかった。
僕は、なかなか書く気になれなかった、前任校の同僚や、先輩たちへの、あいさつを書いた。
懐かしさと、申し訳ない気持ちを、許されるだけいっぱい、はがきに込めた。
そして、昼過ぎの空き時間。
生徒から聞いた、近くの郵便局に、歩いて出かけた。
ひと気のない通りにある、少し古びた、小さな郵便局。
僕は少し、悲しそうな顔だったかもしれない。
窓口に立った。
その瞬間、僕は、魔法にかかっていた。
窓口で、僕を迎えてくれたのは、天使だった。
目が覚めるような、なんだろう、言葉が出ない。
きれいな人、でも、可愛らしい人、なのでもなかった。
といってしまうと、誤解を招くかもしれない。
天使なのだから。
彼女は、僕が、それまで悲しんでいたのを知っているかのように、微笑んでいた。
そこはごく普通の、小さな郵便局。
僕は、あいさつのはがきを手にしている。
そうだ、はがきを出しに来たんだ。
目的を思い出し、歯を食いしばるようにして、はがきを差し出した。
彼女ははがきを数え、僕は枚数分の代金を払って、レシートをもらった。
僕は彼女の顔を、憶えられなかった。
『防衛機制』
魔法をかけられまいと、戦う自分。
彼女は、ごく普通の、郵便局の、お姉さんだった。
そんなに、きれいな人じゃなかった。
僕はそう思うことにした。
郵便局をでて、学校へ帰る。
しかし、なかなか帰ることができなかった。
帰りたくなかったのではない。
道に迷った(@_@)
どこを曲がっても、本通りに出てしまう。
僕はあきらめて、遠回りだけれど、本通りから帰った。
やっぱり、魔法にかかってる、と思った。