3年生の女子に廊下で囲まれた。
僕は、事務室に提出する「扶養家族の書類」を手にしたまま、行く手をさえぎられる。
これを提出すれば、僕は妻のもとに帰れるのに。
このまま、質問攻めに付き合わされるのか・・・・・
Y子、Y、T子の3人組に、壁ぎわに押しやられた。
ちょっと惜しい美女、T子が口火を切る。
「先生、Y子ったら、一瞬で 『彫り』 が深くなるんだよ!!」
・・・・なんのこっちゃ・・・・・
Y と T子 の二人は、Y子 にその 顔芸 を見せるよう、うながす。
いらないよ。急いでるんだから、と思ったが、遅かった。
Y子が下を向いて、スタンバイを始めたのだった。
Y子はもともと、日本人らしくない顔。
思春期らしくちょっと肉がついているので、あどけなく見えるが、
本当に、ちょっと惜しい美女。
気が強いので、同級生の男子が手を出すには、勇気がいるだろうし、本人もいまは、エネルギーのほとんどを、いちおう勉強にあてているけれども、本領を発揮した頃には、たくさんの男を泣かせるに違いない。
そんなことないかな?
そんな彼女なので、「顔芸」の結果は、想像がついてしまう。
YとT子は掛け声をかける・・・「せーの!」
・・・・・・・・・・・・・・・
「おおすごい、一瞬で、堀りが深くなった!」
彼女らの 『期待しているそのままの言葉』 だけ残して、立ち去ろうとした。
本当は、 『アイヌの民芸品の顔』 みたいだった。
「きのう、 ○×(芸能人?) の物まねの練習してて、アゴがつったの!!」
つづきがあるのか・・・・
アゴに力を入れたまま、鏡に向かって何度も練習したらしい。
僕は、この話題を収拾するための 決め のセリフを言い放つ。
「それをまとめて 『5分でやせる顔のシェイプアップ』 とかいう本にしたら、絶対売れるよ」
だけど、入試終わってからにしな・・・・
「先生、もう帰るの?」
「病院、連れて行くから」
これから妊婦検診に連れて行く約束がある。
いちばん頭のいい Y が絡んでくる。
「私と奥さんの、どっちが大切なの?」
僕は、自分のおなかをさする。
「Yちゃん、もうすぐなんですよね・・・・・?」
僕の娘のなまえは、彼女と同じ「Y」なのらしい・・・
「ああ、『Y』はちょうど、Y が卒業したすぐあとにうまれるよ」
話を合わせてやる・・・・。
「会いに行くからね、Yちゃんに!」
開放された。
やっと帰れる。
日曜で年内のセンター試験講習が終わる。
それまで、彼女らの質問攻めは、止まらない。
センター試験
アイヌ 民芸品