日記

ある女子高生の初夢

今日は一日、進路室で、日々の行いの尻拭い。
けっこう仕事をため込んでいる。
生徒がときどき質問に来る。
お母さんが初恋の人かも知れないと、僕が思い込んでいる女の子もやってきた。
けっこうどきどきしながら、絵だけ描いて解く方法を伝授する。
難関大を目指している男子が、へんなしつもんに来た。
「火」ってなんですか?
彼の質問はいつも唐突。
「比」のことかと思ったら、「火」だった。
あのもやもやした感じのものは、いったいなんなのかというのが、正月の間、彼の悩みだったらしい。
いちおう納得させた。
ある女の子が、不安そうな顔をして、ぼくの顔を見に来た。
「先生、私の初夢、先生の夢だったんです」
バキューン。僕は心臓を、うち抜かれた。
この子はみんなのアイドルのような存在。
しかし、その不安そうな顔はなんだ?
「でも死んじゃったから、正夢かと思ったんですよー」
バキューン。もういちど打ち抜かれた。
それで、不安そうにしているわけね。
ぼくの死因はなんなのか、聞こうとしたが、やめた。
話させた場合のメリットとデメリット
カタルシス効果で、彼女は気が楽になる。
言霊効果で、僕の潜在意識に刷り込まれる。
ぼくの潜在意識に知らせるのは、避けたい・・・・・
「おれ、もう3回、死んでるからね」
彼女の顔がふっと明るくなった。
僕も、ふっと笑顔になる。
帰り道は、気をつけようと思った。
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