「性善説・性悪説ってあるけど、どっちだと思う?」
「どういうこと?」
「人間って生まれつき、善なのか、悪なのかっていうこと」
「あ、そのことか。私は、善だと思うわ。」
「どうして?」
「赤ちゃんに、悪い考えがあるわけないもん」
「そうだね。僕もそう思う。じゃ、この話終わりにしよう」
「え、それだけの話?」
「ごめん、それじゃ、オレが『性悪説』の方を信じてるって、言っちゃっていい?」
「へえ、あなた、性悪説なんだ。」
「どっちかというとね。でもこの話、結構長くなるよ」
「いいよ。聞いたげるから。」
「性善説って、いまから2300年前に中国の孟子(もうし)が言い出し
たことなんだ。
ちょうどその頃、中国では、世襲や血縁で将来が決まってしまっていた」
「世襲制って、今もあるわよね」
「荀子(じゅんし)という人が20歳になるころには、孟子は10年前に亡くなっていて、
性善説は、世襲制を裏づけるのに、便利に使われてしまっていたんだ。」
「え、どうやったらその二つがつながるの?」
「生まれた家柄によって、生まれつきの『善のレベル』が違うってこと」
「げー。どうしてそうなっちゃうわけ?」
「結局は、身分の低いものは、生まれつき善のレベルも低いから、偉くなれない」
「やだー。きもーい。」
「そこで、登場するのが荀子の『性悪説』なんだ」
「なるほど、そこにこの話がつながるわけね」
「うん。でも、この続きはまた今度ね」
「あなた、最近そのワザよく使うわよね」
「ううん、2回目だよ」